主成分 | カンナビス薬物の化学は極めて複雑で、完全には知られていない。 大麻草に含まれる△1−トランス・テトラ・ヒドロ・カンナビノール(Tetra Hydro Cannabinol)と呼ばれる活性成分が中毒効果の主成分であるとされているが、これに限られるものではないと考えられている。 実際には大麻からは30種を超える成分が分離されており、 これらを総称してカンナビノイドと呼ぶ。 THC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)は、植物体内にあるTHCA(テトラ・ヒドロ・カンナビノール酸)が熱や光によって脱炭酸したものである。 |
投与方法 | 喫煙による投与(ジョイント、水パイプ etc)、静脈注射による投与、また飲物や砂糖菓子の中に入れ経口投与。 |
効果 | 外的刺激に対する感覚を高める。色彩がより明るく豊かに見え、以前は全く意味の無かった芸術作品の価値が解り、時間の感覚は歪められ10分が1時間に思われる。 意識の分裂が起こり、そのため喫煙者は陶酔を体験している間、同時に自分自身の中毒の客観的な観察者でもあり得る。 効果は喫煙後10〜30分続く不安状態から始まる。効果持続時間は投与方法によって異なる。 喫煙の場合2〜4時間。注射では5〜12時間続く。経口内服による投与の場合、THCAを脱炭酸せずに吸収するため、その効力は喫煙による場合の約1/3になることが知られている。この薬物による人間の死亡ケースは報告されていない(ネコの場合体重1kgに対しチャラス3gが致死量、イヌの場合は大量に投与しても死を齎さない)。マリファナによる「陶酔」の身体的変化は僅かである。また、ワシントン州の自動車局のコントロール・スタディによると、マリファナはアルコールに比べ運転能力に対する損傷が極めて少ないことが明らかにされている。空腹感と味覚の鋭敏化を齎す。 アッパー(興奮剤)とダウナー(抑制剤)の作用を併せ持つ唯一のニュートラル・ドラッグである。 どちらの症状が表面化するかは、個人によってまちまちであり、また同じ個人であってもその時の精神状態・環境などによって左右される。 |
耐性・依存 | 耐性は生じない。 身体的依存は生じない。 精神的依存を生ずる。 |
備考 | 大麻草(カンナビス・サテバ Cannabis Sativa)は数多くの気候の下で自由に育つありふれた雑草で、その使用は広範囲に亙る。
この薬物の調整には三等級あり、それぞれにインディアンの言葉で名前がつけられている。最も安くて効き目の少ないのはブアング(bhang)と呼ばれ、未栽培の大麻の切断された上部から採られるもので、含まれる樹液は少ない。次に効果の大きいガンジャ(ganja)は注意深く選別され、栽培された大麻の花の頂と葉から採り、樹液はより良質で量も多い。最も質の高いのはインドではチャラス(charas)と呼ばれ、熟した大麻の上部を注意深く抉って採った樹脂そのものからできている。チャラス(charas)は正確にはハシッシュと呼ばれるもので良質なブアングの5〜8倍の効力がある。チャラスと同程度の効力をもつポーリンと呼ばれるハシッシュはチャラスとは製法が相違する。チャラスは伐採せずに樹脂のみを手作業で丹念に採集し、手でこねて作るのに対し、ポーリンは熟した大麻草を伐採して干した後、花穂を篩いにかけて得られたハシッシュパウダー(乾燥して粉状になった樹脂)に強い圧力をかけて黄土色の平板状にしたものである。
いわゆるマリファナにも更に四等級の調整があり、THC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)の含有量によってリーフ、バッズ、トップ、シンセミアの四種に分類される。
リーフは草木の下葉の部分でTHCの含有率は低い。バッズは雌株の花穂のことで、THCの含有率はリーフよりかなり高い。 バッズの中でも草木の頂上部分についた特大のものをトップと称す。
最高級のシンセミアは、受粉させずに熟成させた雌株のバッズやトップを指し、THC含有率は6.0〜12.0%にも及ぶ。 THCは大麻樹脂に含まれ、雄株より雌株の方が圧倒的に樹脂含有率が高い。
葉が多く、枝葉が密生して小枝が横に伸びている方が雌株である。 カンナビス薬物は地域によって様々な名称で呼ばれている。 上記の名称の他、グラス、ウィード、リーファー、グリーン、ヘンプなどと呼ばれている。マリファナの場合、色も産地や発育環境によって様々だが中でも黄色いものは質の悪いものである。わが国に於いては大麻は麻薬に指定され、使用には「大麻取締法」の制約を受ける。国によっては現在大麻の使用が合法とされている。オランダ・アムステルダムでは1976年に大麻取締法が撤廃となり合法。欧米の先進諸国、南・東南アジアの大半の国では半ば解禁状態。法的に制約を受けるものの、トルコ、インドネシアなど一部を除くイスラム教国ではカンナビスの使用を奨励している。
カンナビス薬物はいずれ合法化されるであろうと云われている。大麻は我国でも自生しており各地でみられるが、もともとTHCAをあまり含有しておらず、むしろCBDA(カンナビジオール酸)を主成分としてもつ種のアサが多い。CBDAは脱炭酸してもTHCには変化しないので、CBDA種を喫煙投与しても、 あまり向精神作用はのぞめない。 |