a reinforced part in my brain


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ただ広いだけの時間。
いろいろなものが動いている。
ぶつかるわけでもなく、まわったりするわけでもなく
ただ、ただ、そこにどんよりと動いてゆくのです。
その中で私だけが止まっていて、
でも、やっぱりそこでどんよりと止まっているだけなのです、わたしは。
本当は全てが止まっていて、私だけがどんより動いているのかも知れないが、
たといそうだとしても、何も大して変わるわけでもない。
ずっとこうだったし、これからもこのままだろう。
しかし或る時、私は傍らにとても大きな重力を感じた。
ふと見ると、にぎりこぶし大の銀色の突起がいる。
この空間に突然ひょっこりとアタマを出していた。
そして、私と同じように止まって(或いは動いて)涼しげにジッと佇んでいるのだ。
私には一瞬にしてソレが何であるか解った。
明らかに私のものだ。
私はむしょうに腹が立って、丁度私の側を通り過ぎようとしていた棒っきれを掴むと、
力いっぱいソレを殴りつける。
その突起は、何か金属性のもので構成されているようだ。
衝撃は、意外にも快感を伴った。
カラダ中の間接が一瞬ハズレてしまうかのような大きな衝撃音が、
この果てのない空間に吸い込まれていった。
そしてまた元の静けさだけが残る。
あまりにも見事に引き戻された。
だから余計に、ほんの数秒前のデキゴトが夢のように感じる。
この現実感のない記憶をいじりまわして、散々咀嚼した挙げ句に吐き捨てた。
突起はキズひとつ負っておらず、
相変わらずソコに居て何事もなかったかのようにすました顔をしていた。
もう憎くはなかった。
腹も立たなかった。 
が、再び突起を叩きつけたいという思いに駆られる。
そのなりゆきに、私は身を任せた。
私は当然の生理現象であるかのように、それを何度も何度も叩き続ける。
その手には次第にチカラが入っていった。
この現実感のない記憶をアタマにしまいこむことに夢中になって。
私はいつまでもソレを叩き続ける。
もう、止まらない。




17th/Sep/1992 Z.Mastabe