毬藻の日記


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きのう、ぼくの顔が割れた
とても大きな音がした
少し歩くと顔が落ちてしまった
ガラス越しに君の笑顔を見つけて
映ったぼくの顔を重ねて遊ぶ
君は何も云わないね
どうしてだかぼくにも判ってる
散ってしまった剥き出しの唇を動かせないでいるんだね
また君とトビバコ遊びをしたいな
でも今はダメだよ
ぼくの顔は割れていて、爼の上はとても熱いんだ
ああ、君はその愛らしいマブタの上に
クローバーを咲かせるのが好きだね
ぼくは毎朝毎朝その新しい芽を刈らなけりゃならない
さもないと君は大人になったクローバーに跨ってそこいらをうろうろ
クローバーに跨ってそこいらをうろうろ・・・
ぼくは知っている 君がそうするだろうことを
時折、ぼくを呼ぶ声がする
確かに聞き覚えのある声だったんだけど
その声にぼくはそっと腰かける
そうしてやりすごすのがぼくの毎日
ああ、ぼくらはこんなに明るい場所にいるんだよ
辺りが笑う
うずくまるぼくたちの裸は嘲られていた
グッ と唇を噛んで白濁い血を出す
指先でつまみ上げると黒くなったよ
とてもニガイ黒砂糖
やがて辺りは苦さにまみれ そして夜がくる
ここの夜は騒がしく
まるで卵を失くしてしまったさかなのようだよ
東から来た行商人が喚き立てていて
その合間にあの人たちはすごい早さでクルクルとまわりだすんだ
そしていつも何か大きな音がしている
ああ、ぼくらはこんなに暗い場所にいるんだよ

湖の底に ボクとキミ
コンニチハ・・・



15th/June/1992
7th/Jan/1994
25th/Oct/1994
29th/Jul/1995 Z.Mastabe