誕生日


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廃虚で遊んでいると盲目の老婆にあったから、
手にしていたものをポケットに隠した
逃げ出したボクを老婆は追ってこなかったが、
どんどん膨れあがる
教室の中はとても静かだ
窓からは木漏れ日がゆっくりと降り込んでいた
誰もが眠っている
教壇の教師も立ったまま眠っているので、
寄り掛かった机が倒れそうで倒れない
ボクも眠ってしまいそうだったので
地下室へ向かうことにする
飛行機を運転するのは初めてだったけど
ボクのポケットにはキーがある
少しだけドキドキしながらキーを回す
エンジンがかかった
ボクはまだ何も操作していないのに
そいつは地面を掘りはじめた

そして沼で猫にあった

吐息に汚れた皮膚を脱いで
朝凪で身体を洗う
足のない猫が見ている
数え切れない沈黙
身をよじって何かを伝えにくる
彼女には沼の水を飲ませておこう

クラゲが笑う度に
沼の水は重くなる
ひろった時計をこおりの中にしまい
日毎遅れる時間をながめ乍ら
沼の水に手を入れる
とても大勢の生き物が皮膚につく

海の匂いを感じるには程よい頭痛
緑色の子供にお面を売る
その手が透きとおっていた
昨日枕を動かしたからわからない



6TH/AUG/1995
9TH/AUG/1995
9TH/OCT/1995 Z.Mastabe