幻覚発動薬 Hallucinogens


【コカイン(cocaine)】

主成分 コカノキ科コカノキ(erythroxylon coca)の葉に含まれるアルカロイド
投与方法 粉末を剃刀等で更に微粒化し、鼻孔吸入。 静脈注射。 生薬として内服する。コカインの一回の常用量は15〜50mgとされる。 半数致死量は150mg。
効果 覚醒作用、多幸・陶酔感、疲労感消失、活動欲求の異常昂進を生じ、自己拡大感の作用が強い。中枢神経系への興奮作用が強く、爽快感、快活、多弁を齎す。作用時間は15〜30分と短い。
耐性・依存 耐性は生じない。 身体的依存はないが、精神的依存を生ずる。慢性化が進むと被害妄想や追跡妄想が生じ、精神分裂病様の精神障害を起こす。更には幻覚、精神錯乱を来たし、痙攣もおきる。急性中毒の場合、失神、呼吸障害を生じ、心機能障害をひきおこし、時に死に至る。
備考 コカ樹はペルーや南米を原産とする潅木である。生薬としてのコカ葉は、年に3〜5回枝先端の若葉を摘み採って乾燥させて作る。コカ葉に含まれる成分には、コカインの他にシンナモイルコカインやベンゾイルエクゴニンなど、化学的にはエクゴニンを基本の形としてもつものがある。純正コカインは、約0.5〜1.0%含まれている総アルカロイドをとって加水分解し、一度エクゴニンを得て、カルボキシル基(COOH)をメチルエステル化し、水酸基(OH)をベンゾイル化すれば得られる。天然コカインは光学活性体で、偏光を左側へ廻す左旋性の性質をもつ。コカ粉末は、なめると苦みがあり舌を暫くの間無感覚にする。 無色無臭の結晶または白色粉末。アルコールまたは水に溶解するが、エーテルには溶けない。 胃痛・百日咳・喘息に内服し、局所麻酔に用いる。コーク、C、スノー、ホワイト等と呼ばれている。 クラックと呼ばれるものは、コカインの粉末を水に溶かしベーキングソーダやアンモニアを加えて、煮沸して作られた白い固形状のものを指す。クラックの場合、薬効時間は6〜8分と短いが、コカインを上回る作用をもつ。アルファメチルチロシン(AMPT)というアミノ酸の薬物を予め投与しておくと、快感を生ずるドーパミンを合成する酵素の働きを阻害し、コカインによる多幸・陶酔感は齎されない。アンデスの人々にとってコカは何千年もの昔から神聖な植物であって、その葉を石灰と混ぜて噛むことによって疲労を癒し、飢えを忘れ、勇気を得ていた。 現在でもこのコカ葉を噛む風習は残っている。よく知られるコカ・コーラはもともとコカ葉とコーラ子(アフリカ原産のアオギリ科の植物の種子を乾燥させた生薬)のエキスを混ぜた飲料であった。コカイン中毒が問題になりアメリカ政府が会社に勧告し、コカ・コーラからコカ葉エキスが除かれた。我国ではその使用に於いて「麻薬及び向精神薬取締法」の制約を受ける。

 


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